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元町商店街の西端にそれは建っているの。 とても目立つ、大きな建物。 少しずつ近付いてみる。 ここはホテルシェレナ。一見すると普通のホテルのようね。 このホテルは震災で甚大な被害を受けたの。当初は経営を再開する予定だったらしいけれど。 私はこのホテルが現役だったころを知らないの。建物の大きさや立地条件からして、きっと豪華ホテルだったのでしょう。 ベニヤ板と瓦礫。それは破壊。終末の象徴。夢を売る豪華ホテルには決して存在してはならないもの。 手を伸ばせば中が写せそうよ。 冷たく広い空間。置き捨てられたもの。 ここは何をする場所だったのかしら。私にはわからない。 きっとここで、何人もの人たちが夢を見てきたのでしょう。 貴重な休日の夜をこの豪華ホテルで過ごした人たち。家族。恋人。独りじょうず。 その人たちはこのホテルを憶えているのかしら。 紅いカーテン。それは派手なもの。それは高級なもの。それは優雅なもの。そして哀しいもの。 このホテルで様々な催しが行われたのでしょう。数々の物語が生まれたのでしょう。 その場所は朽ちていくけれど、思い出は永遠に本物よ。 専用駐車場。夢への入り口。現実への出口。今はただの、冷たい空間。 もう搬入車両なんてやって来ないわ。 あぁ、この中はどうなっているのかしら。フロントは、客室は、浴場は、どうなっているのかしら。 人通りの絶えないこの場所で、修繕されることも解体されることもなく佇む巨大ホテル。 人々の記憶から忘れられることも出来ず、ただ佇む豪華ホテル。数え切れない思い出と共に、この場所に佇み続けるの。 |
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