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2012/07/01 古 >>
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「北の職人 長熟」(アサヒ)
展望台で見知らぬカップルに囲まれながら夜景を堪能した私は地上に下りた。 交差点に挙動不審な男が佇んでいる。「どうしようかな」「聞いてみようかな」何やらでかい独り言。私? 何なの? 「地元の方ですか?」 あぁ私か。何なのだ。 「大分から来たんですけど」 「お金がなくて」 「こんなこと言うのは恥ずかしいんですが」 まぁつまり金を貸せと。あぁ何でオレに言う。
話を聞いてみると仕事を探してこの街に来たけどお金がなくて飲まず食わず。役所に行けば助けてくれるらしいけど閉まっている。恥をしのんで見ず知らずの人に金の無心をすることにした。だから何でオレ。
歩きながら話をする。悪い人ではなさそうだ。 これが若い娘なら飲みに連れて行ってホテルへお持ち帰りコースなんだけど相手はおっさん。飲みに連れて行くのは良いけど夏とはいえ野宿確定の人に酒を飲ませてハイさよならは心苦しい。でもホテルまで面倒見る気はしないしなぁ。
もっと仕事のある都市へ行きたいから切符代をくれと言われたが調子に乗るなとやんわりと答え、コンビニの前で小銭を数枚渡して別れた。
あぁ家出少女を拾いたいとぼやきつつホテルで独り「北の職人 長熟」を傾けるのだった。
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