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2014/02/03 古 >>
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「レッドロマンス」(サントリー)
チャットが流行っていたのはどのくらい前だっただろうか。私も例に漏れず毎晩のように出入りしていた。住んでいる場所も年齢も職業も違ういつものメンバー。その中に彼女はいた。 遠く離れた場所に住む、少し年上の優しいお姉さん。文字だけでも伝わる魅力。チャットの外で、一対一で話をするようになるのに時間は掛からなかった。当然のように好きになった。ただ、彼女には長く付き合っているという恋人がいた。 特に親しくしている四人で一度だけ会った。私の好意はもちろん彼女を含め他の友人にも伝わっており、彼女も私に好意を抱いているようなことを言っていた。と友人から聞かされたのは何年も経ってからだ。 彼女の結婚を機に、彼女が連絡を寄越して来ることは減っていった。正月や誕生日には携帯電話にメールを送っていたが、返事が来ることは時間とともに減り、やがて来なくなった。メールアドレスが変わったのか、いいかげん呆れられたのか、それとも……。 それから何年か経ち、久しく送っていなかった誕生日にメールを送ってみた。エラーメールがすぐに返って来た。宛先が見付かりません……。それまでは確かに届いていたのだ。 私の恋心はようやく死んでくれた。「レッドロマンス」、カシスが苦く感じた。
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