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2015/07/01 古 >>
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「エアブロイ」(ドイツ)
電波の届かないところへ行きたかった。
携帯電話が通話だけでなくメールやウェブの端末になったとき、我々は便利なツールであるはずの携帯電話に支配されるようになった。現代でこそ外国でも普段通りに携帯電話を使えるようになったが、当時はまだそのようなことはなく、電波から逃れるには外国へ行けば良かった。
帰国の日、出発までのわずかな時間。空港のテラスでビールを口にする。私が日本から離れていた数日間、彼女は私のことを考えたことがあったのだろうか。私とのメールよりSNSを優先し続けた彼女。SNSをのぞくと彼女の最終ログイン時間は数分以内、それが日常だった。
見上げれば青空、見渡せば外国人が数人、目の前には美味いビール。そろそろゲートへ向かわなければいけない。もう一杯……。現実に戻らなければいけない時間が迫っている。現実を知らねばならない時間が迫っている。 二杯目は、もう空になろうとしている。
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